日時:2023年5月29日(月) 17:30~18:30(発表45分,質疑15分)
講演者:狩野彰宏 教授
場所:理学部1号館105号室+zoomハイブリッド
演題:新原生代の生物進化と物質循環
要旨:
新原生代には,全球凍結のような気候激変があった一方で,生物が大きく進化した。新原生代は環境進化の面で地球史の中でも重要な時期であるが,多くの未解決問題を抱えている。例えば,「なぜ全球凍結が起きたのか」「なぜ動物が多細胞化したのか」「極端な寒冷化を生命がどのように生き延びたのか」という問題である。今回のセミナーではこれらの問題のうち,特に多細胞動物の進化について焦点を絞り,進化に関連していたと思われるこの時代の特異的な物質循環についても話をする。
2023年度第一回GBSセミナー(2023/4/24 17:30@理学部一号館105)
日時:2023年4月24日(月) 17:30~18:30(発表45分,質疑15分)
講演者:後藤和久 教授
場所:理学部1号館105号室(Zoomとのハイブリッド形式)
演題:イベント堆積物研究―K/Pg境界の大量絶滅から南太平洋の災害神話まで―
要旨:
地球史上で発生した突発的かつ巨大なイベントは,生物の大量絶滅や進化の重要なきっかけの一つとなってきた.人類史上でも,巨大地震や津波,火山噴火などのイベントが度々発生し,文明や文化の衰退の原因となった可能性も指摘されている.イベント堆積物研究は,イベント(ハザード)そのものの理解だけではなく,環境や人類を含む生物に及ぼした影響や,その後の回復過程を紐解くことでもある.したがって,堆積学だけでなく地球科学の諸分野に加えて文理を問わず学際的な研究が必要となる.今回の発表では,イベント堆積物研究の事例として,K/Pg境界の大量絶滅研究のレビューと,新しく取り組み始めた南太平洋の災害,環境,人類史に関するプロジェクトについて紹介する.
2022年度 臨時GBSセミナー
講演者:石塚真由美(北海道大学/大学院獣医学研究院/毒性学教室)
日時:2023年2月2日(木)17:00~
演題:ザンビアの鉛汚染 ~アフリカで「今」起こっている環境汚染の実態~
場所:336号室
要旨:
アフリカは最後のフロンティアとして各国が資源開発に乗り込んでいる。その為、急激な経済発展を遂げているが、2000年ころより、アフリカにおいてヒトの死亡原因を占める割合は、感染症と非感染症が逆転しつつあり、各国で環境汚染と健康被害が顕在化しつつある。アフリカ南部に位置するザンビア共和国は、銅を中心に金属資源が豊富であり、古くから採掘が行われてきた。しかし、その一方で、鉛-亜鉛鉱山を起点として、現地では鉛の汚染が問題となっている。我々はザンビア・カブウェ市の住民、飼育されている家畜、棲息する野生動物、また土壌や水、粉塵などの環境試料の分析を行い、鉛汚染が非常に深刻であること、ヒトの鉛の曝露経路の推測、鉛曝露による顕在/潜在的な健康影響、等について、ヒトと動物、環境/社会の健康を「一つの健康」としてとらえるOne Healthアプローチに基づき調べてきたので、その成果を紹介したい。
2022年度第八回GBSセミナー(2023/1/23 17:30@理学部一号館336)
講演者:小暮敏博 教授
場所:理学部1号館336号室
演題:原発汚染土壌の研究を振り返る
要旨:
2011年3月11日の東日本大震災は阪神淡路大震災とともに戦後最大の自然災害となり、それによって引き起こされた福島原発事故は放射能による未曾有な環境汚染をもたらした。原発から周囲に飛散沈着した放射性セシウム(RCs)がどのような状態で環境中に存在するかは、今後の汚染の推移と効率的な除染法を考えるための最も基本的な情報であり、小暮研究室ではこの11年間、福島汚染土壌中のRCsの存在形態などを明らかにする研究を続けてきた。その中で、土壌中でRCsを吸着固定している鉱物種とそこからの脱離特性、さらに破損した原子炉から直接飛散したRCs含有放射性微粒子の本質とその諸性質などを報告した。そこでは粘土鉱物のこれまでの研究の蓄積と電顕による微小領域の分析技術が活用されてきた。本発表ではこれまでの研究の経緯を振り返り、今後さらに明らかにすべき問題について考える。
2022年度第七回GBSセミナー(2022/12/19 17:30@理学部一号館336)
講演者:白井厚太朗 准教授
場所:理学部1号館336号室
演題:地球生命圏を同位体で科学(化学)する
要旨:
気候変動は生物地球化学的物質循環を介して生態系に影響を与え,それらの相互作用や共進化史は地球科学における重要な問いである.生物硬組織は化石として保存され,その化学・同位体組成から環境や生態履歴の情報を引き出すことが可能である.環境・生態系の共進化史のさらなる理解のためには,古環境復元の高解像度化・多項目化のみならず,気候変動に対する生態・生態系の応答を復元する新たな指標の開発が必要である.
今回は生命圏に着任後初めてのGBSセミナーなので,前半では自己紹介も兼ねてこれまでの古環境復元手法の開発や魚類回遊生態に関する研究を紹介します.後半では現在取り組んでいる化石試料を使った古環境復元や,海洋生物の新たな移動・回遊指標の開発について紹介します.
2022年度第六回GBSセミナー(2022/11/28 17:30@理学部一号館336)
日時:2022年11月28日(月) 17:30~18:30(発表45分,質疑15分)
講演者:荻原成騎 助教
場所:理学部1号館336号室
演題:ハーキマーダイヤモンド(両錐水晶)の産状と形成過程
要旨:
米国ニューヨーク州ハーキマー郡とモホークリバーバレー周辺の苦灰岩から産出する無色から茶色の透明で18面の両錐水晶について、ハーキマーダイヤモンドという商品名が用いられている。ハーキマーダイヤモンドは、種々の包有物を持ち、条線がなく美しい照りが特徴である。その麗しい姿から、鉱物愛好家のみならず一般の人々にも非常に人気がある鉱物である。
ハーキマーダイヤモンドは、カンブリア紀後期の苦灰岩中に発達する。大型の結晶は、ストロマトライトの抜け殻(溶脱したストロマトライトの空隙)中に産出する。空隙内壁はグラファイトのコーティングがなされ、ハーキマーダイヤモンドはグイラファイトに載る産状で成長し、一部グラファイトを包有物として取り込んでいる。また、大型の結晶には茶水晶が混じる。
本発表では、NY州Herkimer郡Ace of Diamond鉱山とその周辺で行った野外調査の結果を中心に、ハーキマーダイヤモンドの形成過程について議論する。
2022年度第五回GBSセミナー(2022/10/24 17:30@理学部一号館336)
日時:2022年10月24日(月) 17:30~18:30(発表45分,質疑15分)
講演者:砂村倫成 助教
場所:理学部1号館336号室+zoom
演題:深海海底面境界と微生物相
要旨:
境界層は物理化学条件の急激な変化に伴う生物の生育エネルギーが得やすい環境である。海底面は地球上で最大級の境界層であり、海洋から堆積物表層へは沈降粒子を通じて物質が輸送・貯蔵される。海底下から海洋へは、海底熱水やメタン湧水など密度差による流体の上昇、海溝や大陸棚では堆積物の深海への再懸濁を通じ、特定の環境でのフラックスが確認されている。一般的な深海では海底面上1000m程度から海底面に向けて微生物密度の上昇がしばしば観察され、深海海底面付近からの物質もしくは微生物バイオマスの供給が示唆されるが、海底面付近での海水-海底下の連続的な微生物群集の調査例は乏しく、その原因はわかっていない。本発表では、フィリピン海プレート上の8カ所の海山山麓で海底面を境界として堆積物から海底面高度100mまでの海水の連続的採取により微生物群集構造鉛直分布の調査結果を紹介し、海底面近辺での生物地球化学過程の多様性を議論する。
2022年度第四回GBSセミナー(9/29[木]10-17時@336:修士中間発表)
日程:2022年9月29日(木)
場所:理学部1号館336号室(zoomでのハイブリッド開催)
時間:下記プログラム参照
内容:GBS修士課程2年生による中間報告
発表時間等:発表20分・質疑10分
ハイブリッド開催ですが、報告者は原則対面での発表になります。
皆様のご参加と活発なご議論をお待ちしております。
・プログラム
10:00–10:30 田柳紗英「国内成層型湖沼のケイ素動態に関する地球化学的研究」
10:30–11:00 服部竜士「ストロンチウム等の多元素同位体比分析による白亜紀上位捕食者の生息環境・生態復元」
11:00–11:30 佐藤海生「環境DNAメタバーコーディング解析による津波堆積物識別手法の検討とイベント前後の生態系変遷の解明」
11:30–12:00 三木志緒乃「長寿二枚貝ビノスガイの貝殻成長線解析と酸素同位体比分析による高解像度気候変動復元」
― 昼休み ―
13:00–13:30 松本藍「ハシブトガラスの成長に伴う気嚢の発達様式」
13:30–14:00 吉村太郎「化学合成共生二枚貝のバイオミネラリゼーションによる硫黄解毒メカニズムと超深海における結晶安定化戦略」
14:00–14:30 廣田主樹「カイダコ類(アオイガイ科)の卵鞘でみられる生体硬組織の特徴とその進化」
14:30–15:00 松永尚樹「山林土壌を対象とした安価な代替放射能除染方法の検討」
― 15分休憩 ―
15:15-15:45 梅山遼太「脊椎動物の胸鰭の起源と初期進化」
15:45-16:15 渡邉拓巳「胚発生過程に着目した恐竜-鳥類系統における顎関節-中耳構造の形態進化」
16:15-16:45 今町海斗「船舶の排気ガスに含まれる硫酸エアロゾルが気候に与える影響について」
2022年度第三回GBSセミナー(2022/6/20, 22)
日程:6月20日(月)、22日(水)
時間:下記プログラム参照
内容:GBS博士課程2,3年生による中間報告
発表時間等:D3は発表35分・質疑15分,D2は発表20分・質疑10分
ハイブリッド開催ですが、報告者は原則対面での発表になります。
皆様のご参加と活発なご議論をお待ちしております。
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2022年6月20日(月)
・会場:理学部1号館710号室 (Zoom併用)
・プログラム
9:00–9:30 D2多田誠之郎 「竜弓類における鼻腔に関連した吻部構造の形態進化」
9:30–10:00 D2吉澤和子 「魚竜形類の尾部軟組織復元と機能形態学的解析に基づく水棲適応史の解明」
― 30分休憩 ―
10:30–11:00 D2太田成昭 「貝殻成長におけるシグナル伝達因子Wntの役割」
11:00–11:30 D2末岡優里 「火星サンプルリターンを対象とした岩石内生命検出技術の開発」
11:30–12:00 D2中里雅樹 「コンドライト隕石中の超微粒子の同位体比分析法の開発」
― 昼休み ―
13:00–13:30 D2長澤真 「レアアースイオン吸着型鉱床の形成機構に関する地球化学的研究」
13:30–14:00 D2長谷川菜々子 「海洋生態系を通じた鉄循環に関する鉄安定同位体地球化学的アプローチ」
― 10分休憩 ―
14:10-15:00 D3名取幸花 「起源の異なるエアロゾルの分析による燃焼起源の指標としての金属元素同位体比の有効性の評価」
15:00-15:50 D3脇水徳之 「頭部神経系と頭骨吻部形態に着目した爬虫類の嘴構造の進化史と感覚機能の復元」
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2022年6月22日(水)
・会場:理学部1号館101号室 (Zoom併用)
・プログラム
10:30-11:20 D3山口(福田)瑛子 「粘土鉱物への吸着反応の系統的理解に基づく金属イオンの環境動態解明」
11:20-12:10 D3蓬田匠 「先端X線分光法の開発によるウランの環境地球化学」
― 昼休み ―
13:00-13:50 D3石川弘樹 「現生鳥類の孵化後の成長に伴う骨学的形質の変化とその順序異時性」
13:50-14:40 D3佐藤英明 「軟体動物の貝殻形態および模様形成の数理的解析」
― 10分休憩 ―
14:50-15:40 D3髙橋玄 「魚類耳石における炭酸カルシウム結晶相の制御機構の解明」
15:40-16:30 D3中野晋作 「岩石内生命圏における微生物生態の解明」
2022年度第二回GBSセミナー(2022/5/30 18:00@Zoom)
日時:2022年5月30日(月) 18:00~19:00(発表45分,質疑15分)
講演者:高橋嘉夫 教授
場所:Zoom開催
演題:粘土鉱物中の鉄の酸化還元反応の地球惑星科学における多面的意義
要旨:
粘土鉱物(主にスメクタイト)など層状ケイ酸塩の主に8面体層中に含まれる鉄のFe(II)とFe(III)の変化は、Stucki et al. (1984)の最初の論文以降、依然として多くの研究がなされてきている。その理由は、その反応機構が未だに十分に解明されていないためである一方、粘土鉱物はあらゆる地球惑星科学・環境科学試料中に存在し、その影響が多岐に渡る可能性があるからである。我々は主に、XAFS法による検出を基盤にしながら、その酸化還元反応が様々な現象に与える影響について考察することを試みている。主に以下のトピックスについてお話ししたい(トピックスの順番は、扱う環境として酸化的環境から還元的環境の順番に並べた)。
(i) 土壌中の酸化還元反応における粘土鉱物中のFe(II)/Fe(III)比変化の占める位置づけと微生物活動への影響(M1・清水優希さん)
(ii) 粘土鉱物中のFe(II)/Fe(III)比変化が粘土鉱物の吸着容量に与える影響(PD・田中雅人さん;M1・田中啓資さん)
(iii) 地層中のウランの酸化還元状態に及ぼす層状ケイ酸塩の影響(2021年度修士修了・竹田早英桂さん)
(iv) 隕石・リュウグウ試料中の層状ケイ酸塩の鉄価数のEh計としての意義や非生物的有機物合成への関与(D1・河合敬宏さん)
今後は、これらの基盤となる層状ケイ酸塩中の鉄価数比とEhの関係(Gorski et al., 2013)を蛇紋石に対して求める研究を進めたいと考えている。