2025年度 第5回GBSセミナー(2025/10/17)

日時:2025年10月17日(金) 17:30〜18:30 (発表45分,質疑15分)

講演者:高橋嘉夫 教授

場所:理学部1号館105号室
演題:分子地球化学的手法を用いたリュウグウの水環境推定やprebiotic chemistryへの示唆

要旨:リュウグウ母天体のようなC型小惑星は、太陽系で最初に液体の水が生成した場所と考えられる。液体の水は、様々な物質の化学反応の場であり、その水環境条件(Eh、pHなど)や、そこで起き得る前生物的化学(prebiotic chemistry)を推定することは、生命の起源にも関わる重要な研究テーマである。我々は、これまで開発してきた走査型透過X線顕微鏡(STXM)などの分子地球化学的手法がこうした解析に有効であったことが契機となり、C型小惑星中の様々な元素のspeciationを行う機会を頂いた。これまでに各種XAFS分析から、C、N、Na、Mg、Al、P、S、Cl、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Asなどの元素のリュウグウ中の化学種を決める実験を進めてきた。本講演では、これらの分析から分かるリュウグウの母天体中の水環境推定やprebiotic chemistryへの示唆について紹介する。