2022年度 臨時GBSセミナー

講演者:石塚真由美(北海道大学/大学院獣医学研究院/毒性学教室)

日時:2023年2月2日(木)17:00~
場所:336号室

演題:ザンビアの鉛汚染 ~アフリカで「今」起こっている環境汚染の実態~

要旨:
アフリカは最後のフロンティアとして各国が資源開発に乗り込んでいる。その為、急激な経済発展を遂げているが、2000年ころより、アフリカにおいてヒトの死亡原因を占める割合は、感染症と非感染症が逆転しつつあり、各国で環境汚染と健康被害が顕在化しつつある。アフリカ南部に位置するザンビア共和国は、銅を中心に金属資源が豊富であり、古くから採掘が行われてきた。しかし、その一方で、鉛-亜鉛鉱山を起点として、現地では鉛の汚染が問題となっている。我々はザンビア・カブウェ市の住民、飼育されている家畜、棲息する野生動物、また土壌や水、粉塵などの環境試料の分析を行い、鉛汚染が非常に深刻であること、ヒトの鉛の曝露経路の推測、鉛曝露による顕在/潜在的な健康影響、等について、ヒトと動物、環境/社会の健康を「一つの健康」としてとらえるOne Healthアプローチに基づき調べてきたので、その成果を紹介したい。

2022年度第八回GBSセミナー(2023/1/23 17:30@理学部一号館336)

講演者:小暮敏博 教授

場所:理学部1号館336号室

演題:原発汚染土壌の研究を振り返る

要旨:
2011年3月11日の東日本大震災は阪神淡路大震災とともに戦後最大の自然災害となり、それによって引き起こされた福島原発事故は放射能による未曾有な環境汚染をもたらした。原発から周囲に飛散沈着した放射性セシウム(RCs)がどのような状態で環境中に存在するかは、今後の汚染の推移と効率的な除染法を考えるための最も基本的な情報であり、小暮研究室ではこの11年間、福島汚染土壌中のRCsの存在形態などを明らかにする研究を続けてきた。その中で、土壌中でRCsを吸着固定している鉱物種とそこからの脱離特性、さらに破損した原子炉から直接飛散したRCs含有放射性微粒子の本質とその諸性質などを報告した。そこでは粘土鉱物のこれまでの研究の蓄積と電顕による微小領域の分析技術が活用されてきた。本発表ではこれまでの研究の経緯を振り返り、今後さらに明らかにすべき問題について考える。