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2019年度 第三回GBSセミナー(6/17実施)

博士論文中間発表プログラム

日時:2019年6月17日(月)9:00-16:40
場所:理学部1号館1F 105号室


<午前>

9:00-9:35: オム ジウォン(D2, 川幡研)
Study on hydrothermal circulation systems along spreading centers by Mg isotopes
9:35-10:10: 梶田 展人(D2, 川幡研)
アルケノンを用いた極東沿岸域の古気候変動に関する研究 Research on paleoclimatic change in coastal area of East Asia using alkenone thermometer
10:10-10:45: 前田 歩(D2, 川幡研)
セディメントトラップ試料から推察されるベンガル湾の浮遊性有孔虫群集の季節変動
10:45-11:20: 福山 鴻(D2, 鍵研)
高温高圧実験とSIMS分析から求めたstishoviteへの窒素取り込み量と沈み込むスラブを介した地球深部における窒素貯蔵庫形成
11:20-12:10:槇納 好岐(D3, 平田研)
コンドライト隕石の微量元素分析による太陽系の化学進化の解明

<午後>


13:10-14:00:雨川 翔太(D3, 狩野研)
日本の石筍の同位体記録から推定される最終氷期から完新世にかけてのアジアモンスーン変動
Asian monsoon variability during the last glacial period to Holocene inferred from isotope records of Japanese stalagmites
14:00-14:50:栗栖 美菜子(D3, 高橋研)
鉄安定同位体比に基づくエアロゾル中の燃焼起源鉄の海洋表層への寄与推定
15:00-15:50:宮本 千尋(D3, 高橋研)
化学種解析に基づく硫酸エアロゾルの反応過程の解明とその吸湿性評価や起源推定
15:50-16:40:花井 智也(D3, 遠藤研)
現生鳥類の頭骨における成長アロメトリーの解析 Analysis of cranial growth allometry in modern avians

要旨は当日印刷体にて配付します。

D2:発表25分、質疑応答10分

D3:発表40分、質疑応答10分

2019年度 第二回GBSセミナー(5/20実施)

講演者:川幡 穂高     教授 (大気海洋研究所)
日時:5月20日(月)17:30~
場所:理学部1号館710号室


演題:ホモ・サピエンスの発展,社会の崩壊に影響を与えた環境・気候変動
―特に,完新世中期/後期境界のヒト,社会,生業に現れたイベント―


近年の古気候・環境の高時間解像度+精度での復元レベルは,考古資料・文献史料から描き出せる歴史の精度に追いついたことを意味する. 人間のゲノム・人骨形態解析も急速進展し,日本人やアジア人の特徴が明らかになりつつある.これらと古気候・環境学との共同研究により,Homo sapiensが,どのような気候・環境を体験し,現代日本人や日本社会を形成したのか,評価できる.対象とする時間範囲は,Homo sapiensのアフリカ誕生から日本社会の江戸時代までとして,境復の中から温度を定量的に復元してきた.1)旧石器時代(約60-16ka, アフリカ出発から日本に到着して全国に居住区を拡大).2)新旧石器時代(約16-3ka,いわゆる平和でのどかな縄文時代),3)初期農耕時代(約3,000〜6世紀まで,水稲栽培と国家形成まで,いわゆる弥生時代から古墳時代),4)歴史時代(6世紀以降,文字記載のある時代).ホモ・サピエンスの誕生から日本人の成立,日本社会の発展に関連した環境・気候復元で発表した私達の20余論文からのデータの示すところは,「環境変動はシステムの最も脆弱な所に効果的に影響を与える」ということである.今回は,この中から特に,4.2kaイベントについて取り上げる.

Homo sapiens を対象に,近年,ミトコンドリアDNA,Y染色体DNA,核DNAの分析・解析法が急速に進展している.2018年7月に国際年代層序表の完新世が正式に3期間に分類され,前期/中期境界(8.2 cal. kyr BP),中期/後期境界(4.25 cal. kyr BP)が認定された.特に,後者の境界は,人類社会に大きな影響を与えたイベントとされ選ばれたが,その背後にあるプロセスについては現時点で不明である.

中期/後期境界は日本では縄文時代に対応し,青森県周辺における環境指標(アルケノン水温,有孔虫の酸素同位体比,花粉・快慶中の群集組成など)を再精査した結果,4.2kaに気温が2.0℃下がり,クリ林も劣化し,食糧生産密度が下がったため三内丸山遺跡の集落が崩壊したことが明らかとなった(Kawahata et al., 2009, Quaternary Science Reviews 28: 964-974+revised version submitted).この時期,縄文人の遺跡数は関東などでは顕著に減少したが,北東北では必ずしも減少せず,住居の床面積は逆に増加し,人口は減っていないとの見解もある(関根,2014, Daiyonki-Kenkyu 53: 193-203; Crema et al., 2016, PLoS ONE 11: e0154809. doi:10.1371/journal.pone.0154809).日本人の現代人のミトコンドリアDNAより過去の相対人口が推定されている(Peng and Zhang, 2011, PLoS ONE 6(6): e21509. doi:10.1371/journal.pone.0021509).日本人の過半数を占める弥生・渡来系を代表とするハプログループD4は4ka付近に極小を示す.水稲栽培は河姆渡遺跡周辺で開始され,長江中下流で発展したが,4ka付近に過去数千年間で最大規模の寒冷イベントが起こり(Kajita et al., 2018, Quaternary Science Reviews, 201, 418-428),これにより人口が減ったと解釈した.一方, 縄文人起源のハプログループであるとされるN9b, M7aについては,この境界に極小をもたないので人口の顕著な減少はなかったと判断した.日本と中国東部の異なった環境が,日本人を構成する主要2タイプのミトコンドリアDNAから計算された異なる相対人口プロファイルに対応していると結論した.この特徴は,「現代人のミトコンドリアDNAに過去の気候の激変が記録されている」ことを示唆している.

2019年度 第一回GBSセミナー(4/22実施)

講演者: 後藤 和久     教授 (地球惑星科学専攻 )
日時:4月22日(月)17:30~
場所:理学部1号館710号室
演題:「 堆積学で紐解く地球史と自然災害」

要旨:
 堆積学を専門とし,野外調査を主軸に各種分析や数値計算を行って,地球史や自然災害の実態解明に取り組んできました.今回
のセミナーでは,これまで取り組んできた
1)白亜紀末の天体衝突と環境変動,
2)火星の堆積環境についての比較惑星地質学的研究,
3)国内外の過去数千年間の巨大津波の履歴と規模の推定に関す
る研究
について,概略を述べたいと思います.さらに,臨象地球科学分野の方向性についても紹介する予定です.