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2022年度第一回GBSセミナー(2022/4/25 18:00@理学部一号館336)

日時:2022年4月25日(月) 18:00~19:00(発表45分,質疑15分)

場所:理学部一号館336号室

講演者:遠藤一佳 教授

演題:動物ミトコンドリアDNAにおける新規遺伝子の進化(De novo gene evolution in animal mitochondrial DNA)

要旨:
遺伝子の進化プロセスは、遺伝子の塩基配列をもとに地球と生命の歴史の解明を図る上で重要であり、遺伝子の重複、使い回し、融合、欠失、水平伝播など様々な現象が知られている。その中で最も研究が遅れているのが、新規遺伝子の進化(誕生)である。それでも近年の高速シーケンサーによる近縁複数種のゲノム解読等により、新規遺伝子進化が、予想以上に頻繁に起きていることがわかってきた。ここでは、そのような新規遺伝子進化が、腕足動物シャミセンガイ類のミトコンドリアDNA(mtDNA)でも起きていることを発見したので紹介する。この新規遺伝子候補は、(1)共通祖先における不在、(2) 転写産物と翻訳産物の存在、(3) 近縁種間での配列の保存、(4)自然選択を経験という、新規遺伝子認定の規準を満たすほか、mtDNA上で新規に進化したことを示すいくつかの特徴を示す。ただし、この新規遺伝子がコードするタンパク質の正体については今後の研究が必要である。mtDNAでの新規遺伝子進化の報告はこれまでにない。mtDNAは核DNAに比べ、圧倒的にサイズが小さく扱いやすいため、今後新規遺伝子進化を研究する有用な実験系になる可能性がある。

2021年度第八回GBSセミナー(2022/2/4 17:00@ZOOM)

日時:2022年2月4日(金) 17:00~18:00(発表45分,質疑15分)

講演者:加藤真悟 博士(理化学研究所バイオリソース研究センター)

演題:分子生態学と地球惑星科学の相互作用

要旨:
地球表層環境におけるエネルギー・物質循環の過去・現在・未来を議論する上で、微生物の存在を無視することはできない。しかしながら、地球上に存在する微生物の大部分は、まだ実験室内で培養できておらず、その機能や役割はほとんど未知である。それら機能未知の未培養微生物は、宇宙を満たす暗黒物質(ダークマター)になぞらえて、「微生物ダークマター」と呼ばれている。近年、対象となる微生物を培養できなくても、環境中のその微生物由来の生体分子(主に核酸)を分析することができるようになった。分子(微生物)生態学は、それらの生体分子を対象にして微生物の生態に迫る学問分野であり、「微生物ダークマター」の全貌解明において中心的な役割を担っている。演者は、これまで海底熱水噴出域や温泉といった極限環境に生息する「微生物ダークマター」を対象として、培養を基軸にしつつ、分子生態学なアプローチも進めてきた。本セミナーでは、演者のこれまでの研究成果を紹介しつつ、分子生態学の歴史を振り返り、現状を把握し、今後の分子生態学と地球惑星科学の相互作用について皆さんと一緒に考えてみたい。

2021年度第七回GBSセミナー(2021/12/20 18:00@ZOOM)

日時:2021年12月20日(月) 18:00~19:00(発表45分,質疑15分)

講演者:鈴木庸平 准教授

演題:生命-岩石相互作用研究の最前線

要旨:
生命の誕生には岩石と水の反応で生成する還元物質や、核酸、タンパク質、脂質等の生体分子の役割を果たすとされる粘土や金属硫化物が重要視される。深海や地底の岩石内生命圏は光合成産物から隔離される場合、光合成生物誕生前の初期地球生態系と類似すると考えられる。そのような岩石内部で、どのようにエネルギーを獲得し、生命活動を営んでいるか不明であった。しかし、試料採取技術、ゲノム解読技術、局所分析技術の近年の発達により、始原的な生命が発見され、生命の誕生で重要視される物質との関連性が明らかになりつつある。本セミナーでは、地球外からの発見も期待される岩石内生命について、地球初期から存在する岩石との相互作用について最新の科学成果を紹介する。

2021年度第六回GBSセミナー(2021/11/22 18:00@ZOOM)

日時:2021年11月22日(月) 18:00~19:00(発表45分,質疑15分)

講演者:平田岳史 教授

演題:地球メタロミクスに向けた新しい質量分析法の開発

要旨:
メタロミクス(生体金属支援機能化学)は、金属元素の役割を通じて生体機能を理解しようとする新しいオミクス研究分野です。私達は地球あるいは銀河を1つのシステムと考え、金属元素の起源や輸送過程、地球環境への影響、さらには生体内反応への影響を調べています(地球メタロミクス)。この目的のために、様々な様々な最先端計測技術の開発を続けています。本発表では、今後の地球メタロミクス研究を担う、2つの分析手法(元素の起源を探る世界で初めての高時間分解能質量分析計、生体分子を高感度かつ高感度で検出する新しい質量分析計)をご紹介します。まだ未完成の分析技術であるが、最近1年間での進歩をご紹介します。

2021年度第五回GBSセミナー(2021/10/25 18:00@ZOOM)

日時:2021年10月25日(月) 18:00~19:00(発表45分,質疑15分)

講演者:鍵裕之 教授

演題:高圧下でアミノ酸をつなげる

要旨:
高圧下では有機化合物は重合反応や脱水縮合反応を起こす。我々がこれまで研究してきた有機化合物の圧力誘起反応をレビューしたのち、アミノ酸の圧力誘起反応について紹介する。前生物学的条件でアミノ酸からペプチドを生成させる研究がこれまで行われてきたが、我々は氷天体内部の高圧条件を想定し、室温条件でアミノ酸にGPaオーダーの圧力をかけ、脱水縮合反応が起こりペプチドが生成することを見いだした。セミナーではアミノ酸の凍結濃縮、ペプチドの不斉増幅の可能性についても述べる予定である。

2021年度第四回GBSセミナー(2021/9/21 9-17@ZOOM)

●地球生命圏科学講座 修士中間報告会

●日時:2021年9月21日(火)

●プログラム(発表:18分,質疑:7分)
9:00   石水浩喜   板井研
9:25   宇野友里花   平沢研
9:50   海老澤俊   小暮研
10:15   加藤凜太郎   後藤研

10分休憩(10:40〜10:50)

10:50   河合敬宏   高橋研
11:15   菊地柾斗   遠藤研(對比地研)
11:40   後藤大貴   白井研

55分休憩(12:05〜13:00)

13:00   小長谷莉未   高橋研
13:25   竹田早英桂   板井研
13:50   田中風羽   佐々木研
14:15   西村大樹   鈴木研
14:40   沼倫加       平田研

15分休憩(15:05〜15:20)

15:20   東秀星   後藤研
15:45   村田彬   狩野研
16:10   森悠一郎   鍵研
16:35   吉田晶   鈴木研

17:00終了

2021年度第三回GBSセミナー(2021/6/21実施)

●地球生命圏科学講座 博士2,3年 中間報告会

●日時:2021年6月21日(月)

●プログラム
 D2(8名)
9:00–9:30 石川 弘樹
9:30–10:00 川島 彰悟
10:00–10:30 佐藤 英明
 15分休憩
10:45–11:15 髙橋 玄
11:15–11:45 中野 晋作
11:45–12:15 名取 幸花
 45分昼食
13:00–13:30 山口 瑛子
13:30–14:00 脇水 徳之
 20分休憩
 D3(3名)
14:20–15:10 上田 裕尋
 10分休憩
15:10–16:00 佐久間 杏樹
 10分休憩
16:10–17:00 鈴木 七海

2021年度第二回GBSセミナー(2021/5/24実施)

日時:2021年5月24日(月) 18:00~

講演者:佐々木猛智 准教授

演題:博物館における生物多様性と進化の研究

要旨:
生物多様性は博物館が重要な拠点となる研究テーマのひとつである。多様性には、形態的多様性、生態的多様性、遺伝的多様性、化石記録の多様性など、様々な視点からの見方があり、時間軸が加わると進化の研究に結びつく。生物は種数が多い上に(貝類の現生種だけで20万種存在すると言われている)、個体変異があり、時間の経過とともに変化し、進化する。このような多様な研究対象に対して何らかの法則性を求める場合には、多くの分類群を調べる必要があり、網羅性(タクソンサンプリング)が重要になる。十分な量の生物試料を短期間で収集することは困難なことが多く、そのような場合には博物館標本が重要になる。近年の生物多様性の研究の例を紹介し、標本の重要性、電子化の重要性、そして今後の生物多様性研究の課題について解説する。

—– 2021年度 GBSセミナー予定 —–
第1回 4/26(月) 板井
第2回 5/24(月) 佐々木
第3回 6/21(月) 博士中間発表
第4回 9/21(火) 修士中間発表
第5回 10/25(月) 鍵

2021年度第一回GBSセミナー(2021/4/26)

日時:2021年4月26日(月) 17:30~
場所:理学部1号館336号室+オンライン
演題:生態系地球化学 ~地球システム学とオミクスの間~
講演者:板井啓明 准教授
要旨:
「気候変動に代表される地球表層システムの摂動に伴い、高次生物に含有される特定元素濃度はどのように変化するか?」という問いを立てた時、答えるべきはどの分野の学者だろうか。生態学者は有力候補だが、私は系を問わずに元素の挙動を追跡する地球化学者が適任だと考える。C, H, N, S, O, Pなどの主要生元素を除けば、この問題を扱う国内地球化学者は多くはないので、私はこれに取り組もうと考えている。この知的体系を組み上げるには、環境・低次生態系・高次生態系を通貫する展望が必要である。各段階における技術的課題と、我々の取り組みについて紹介したい。

(1)  水圏高次生物への微量元素の生物濃縮性評価法
魚類や海棲哺乳類など、水圏食物網の上位に位置する生物の組織中元素濃度変動は、寿命の長さや、餌生物・回遊履歴の多様性から、考慮すべき要因が多い。一方、恒常性の高い元素は、環境や生態系構造の変化に依らず一定の濃度範囲に収まるであろう。これら要因についての基礎知見を得るための研究として、(i)海洋生物の食物網を介した微量元素移行、(ii)カツオ筋肉中微量元素濃度の地域差とその要因、(iii)カツオ筋肉中イオウ形態の海域間比較、(iv)海洋生物における鉄安定同位体比分布の特徴、(v)天然魚類の水銀濃縮へのバイオロギングデータの応用、(vi)水銀の大気海洋物理モデルと広域生物モニタリングデータのカップリング、の概要を紹介する。

(2)  水圏低次生態系における元素サイクル解析法の課題
低次生態系は、実験的研究と観測的研究の融合が発展させやすい対象だが、さしあたり取り組んでいるのは、10-1000 μmのサイズを有する生物群の個体別微量元素濃度分析法である。これは、高次生物で実施中の生物種別の元素恒常性評価を、低次生物に応用する基盤を整備するためである。微細藻類、原生生物、小型甲殻類などを対象に、放射光X線マイクロビームを用いた個体別微量元素濃度・形態分析法の開発状況と展望について説明する。

(3)  環境 〜21世紀の陸水学〜
湖沼は、小規模な調査グループで水・生物・堆積物の包括調査を完遂でき、一研究者のライフスパンで環境変動への自然応答を観測できる貴重な天然の実験場である。湖沼学は長い歴史を有し、比較湖沼学的視点には目新しさがないが、そのような視野が共有されていた時代と比較すると、微量元素安定同位体分析や環境DNAなど、新しい技術ツール開発も進んできた。研究例として、(i)琵琶湖のヒ素濃度の経年変化、(ii)DOC生成による大気中水銀のポンプ機構、(iii)深水層酸素消費への底質由来還元型分子の寄与、(iv)湖沼の微量元素ホメオスタシス、の概要を紹介する。

—– 2021年度 GBSセミナー予定 —–
第1回 4/26(月) 板井
第2回 5/24(月) 佐々木
第3回 6/21(月) 博士中間発表
第4回 9/21(火) 修士中間発表
第5回 10/25(月) 鍵

2020年度第六回臨時GBSセミナー(2/2実施)

日時:2021年2月2日(火)17:00-
演題:海洋生物の絶滅を誘発した三畳紀の「雨の時代」~カーニアン多雨事象とパンサラサ海の巨大火成岩岩石区~
講演者:尾上哲治(九州大学)
要旨: 中生代の三畳紀(約2億5190万年前~2億130万年前)という時代の気候は、総じて高温乾燥であったことが知られています。ところが、三畳紀の「カーニアン階」と呼ばれる時代の地層には、世界各地で湿潤な気候の痕跡が認められており、それらの記録は、当時の地球に約200万年間にわたる「雨の時代」が存在したことを示していました。「カーニアン多雨事象(CPE: Carnian Pluvial Episode)」と呼ばれるこの気候変化は、いくつかの生物群の絶滅や大規模な進化的変化があった時期と一致していることが知られています。そして最近では、この長雨を引き起こした原因として、現在の北米北西部に分布するランゲリア洪水玄武岩の火山活動が挙げられてきました。しかし玄武岩の噴出年代測定に伴う不確定性のために、ランゲリアの火山噴火とカーニアンの気候変化及び生物群の変化が同時期に起きたと明言するのは難しいとされてきました。 そこで私たちの研究グループは、カーニアン多雨事象と火山活動の関連性について解明するため、岐阜県坂祝町の木曽川河床に観察されるチャートという岩石を対象にオスミウム同位体分析を行いました。研究の結果、地球内部のマントル物質に特有の低いオスミウム同位体比が、カーニアン前期のチャートから検出されました。これは、大規模な火山活動に由来するオスミウムが、カーニアン前期の海洋に大量に供給されたことを意味します。この火山活動により噴出した火山岩の候補としては、上記のランゲリア洪水玄武岩が挙げられますが、日本の三宝帯や極東ロシアのタウハ帯といった地質体にもカーニアン前期に噴出した玄武岩が総延長3000 kmにわたって分布しています。本発表では、これらの環太平洋を取り囲むように分布する玄武岩は、カーニアン前期の超海洋パンサラサ海で巨大火成岩岩石区を形成していたとする仮説を提唱し、カーニアン多雨事象がこの大規模火山活動により引き起こされた可能性について議論します。