現世の陸棚斜面より深い深海環境における炭酸塩堆積物は,主にココリス・浮遊性有孔虫・翼足類などの石灰質骨格を持つ浮遊性生物の遺骸からなる (Milliman, 1974).これらは,炭酸カルシウム補償深度 (CCD) 以浅の深度に着底すると,溶解を免れて炭酸塩堆積物になる.この様な堆積物はウーズ (ooze) とも呼ばれ,放散虫や珪藻の様な珪質骨格を含んでいるのが一般的である.浮遊性生物による炭酸塩堆積物の生産量は,浅海域での固着性生物による量よりもはるかに大きく,海洋での全炭酸塩生産量の8割を占めると見積もられている (Tucker and Wright, 1990).ただし,ココリスや浮遊性有孔虫の多様度が増加したのは後期ジュラ紀以降の事であり (Martin, 1995),それ以前の時代では深海成炭酸塩堆積物の重要度は低かったと考えられている.
重力流などのプロセスで,浅海域で生成した炭酸塩堆積物が,陸棚斜面の様な,より深い環境へと再堆積することもある (Cook et al., 1983).これについては,バハマの第四系について研究が進められており,間氷期に再堆積が起りやすい事が示されている (Droxler and Schlager, 1985). |
|
また,深海のメタン冷湧水口や熱水噴出口付近には,無機的沈澱物や化学合成群集の骨格による炭酸塩堆積物が発達することが明らかになってきた (Lutz and Kennish, 1993; Roberts et al., 1993; 町山ほか, 2001).これらの堆積プロセスが理解されるにつれて,過去の堆積物中からも,同様の起源を持つ炭酸塩が次第に認定されてきた(服部ほか, 1996; Powell et al., 1998). |
|
|
|