Shallow marine
浅海
現在の亜熱帯〜熱帯の浅海域では,海水の炭酸カルシウムに対する過飽和度が高く,炭酸塩骨格分泌する底生動物が多く生息し,光合成も活発に行われるため,炭酸塩堆積物の生産性が高い.堆積作用が長期間継続すると,炭酸塩堆積物は堆積場を埋積して平坦な地形を作る.これを炭酸塩プラットフォーム (carbonate platform) と呼び,浅海での炭酸塩堆積場を記述する言葉として広く用いられている.炭酸塩プラットフォームの形態や構造は,気候やテクトニックな条件により多様であり,多くの堆積モデルが提唱されてきた (Ahr, 1973; Ginsburg and James, 1974; Wilson, 1975; Read, 1982, 1985; Sarg, 1988).多様な炭酸塩プラットフォームは Tucker and Wright (1990) により, 縁取り型陸棚 (rimmed shelf)・ランプ (ramp)・縁海型プラットフォーム (epeiric platform)・隔離型プラットフォーム (isolated platform)・溺れたプラットフォーム (drowned platform) に分類されている.このうち,下図には縁取り型陸棚とランプの断面を示す.縁海型プラットフォームは安定地殻上に発達した広大な浅海域である.カンブリア〜オルドビス紀に中国や北アメリカを含む地域に発達していたもの (Pratt and James, 1986) が典型である.隔離型プラットフォームは海山上等の深海に囲まれた浅海域を指し,日本の秋吉帯の石炭〜ペルム系 (Sano and Kanmera, 1988) がこれに相当する.また,溺れたプラットフォームは,地殻の沈降等の原因によって,水深が増加して炭酸塩の堆積作用が停止した場所である (Schlager, 1981).
縁取り型陸棚は,平坦な地形の海側に,明瞭な斜面を経て深海にいたるプラットフォームである.陸棚の縁辺部は,波浪の影響を直接受けるため,水のエネルギーが強い.この物理的条件を反映して,生物礁や砂瀬による浅瀬が発達し,陸棚を縁取っている.その陸側は,浅瀬により波浪の影響が弱められるため,穏やかなラグーンの環境が発達することが多い.最も内側の海岸線付近には潮汐平底 (tidal flat) が発達し,砂州堆積物が見られることもある.一方,陸棚縁辺の海側の斜面には礁からもたらされた礫を含む崖垂堆積物が認められる.現世の縁取り型陸棚はカリブ海の多くの場所に発達する.ベリーゼ沖ではサンゴ礁の内側に広いラグーンが発達し (Gischler and Hudson, 1998, 2004), バハマでは,ウーイドによる砂瀬による陸棚縁辺が発達する (Aalto and Dill, 1996).また,過去の浅海成炭酸塩堆積場の多くも縁取り型陸棚である事が示されており,代表的な例として北米南部のペルム系 (Capitan Reef; Kerans and Tinker, 1999) やアルプス山脈の三畳系 (Stanton and Flugel, 1989) が挙げられる.
 これに対して,ランプは海岸から深海まで移行する緩やかな(1度程度)斜面地形を持ち,多くの珪質堆積物による陸棚地形と類似する. 大規模な生物礁は発達しないが,浅部 (inner-ramp) では小規模な尖礁 (pinnacle reef),中〜深部 (mid- and outer-ramp) ではマッドマウンドを含んでいることがある (Burchette and Wright, 1992).現世のランプはユカタ半島沖などに認められる.また,過去のランプの例として,北大西洋の上部ジュラ系が挙げられる (Jansa et al., 1989; Ellis et al., 1990).
Preface
Authers
Index
References
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