ドロマイト (dolomite) とはCaMg(CO3)2成分の三方晶系の炭酸塩鉱物である.ドロマイト鉱物を主とする岩石もドロマイトと呼ばれることが多いが,混乱を避けるために,岩石に対しては苦灰岩 (dolostone) という言葉を用いるのが望ましい.
ドロマイトは,地質学的に見ると,炭酸塩岩の数10%を占めているが,その成因については完全に理解されていない.その原因は,現在の炭酸塩堆積場において,ドロマイトが生成している場所が極めて限定されている事にある.サブカなどの蒸発環境を除いて,ドロマイトの多くは続成作用の過程でCa炭酸塩鉱物を交代したものである(ドロマイト化作用).
ドロマイト生成に関するプロセスと条件については,多くの研究がなされ,様々なモデルが提示されてきた(Warren, 2000; 松田,2001).化学的に見ると,ドロマイト化を促す続成水は,A) 方解石やアラゴナイトよりもドロマイトに対する過飽和度が高く,B)ドロマイトの沈澱を阻害する硫酸イオン濃度が低いという,2点の重要な特徴を持つ.この様な続成水は下記の続成環境でドロマイト化を起こす.
1) 蒸発性環境−サブカなどの環境では海水からCa炭酸塩やCaSO4鉱物が沈澱し,水のMg/Ca比が高くなるとともに,硫酸イオンが取り除かれる.そのため,石膏等の蒸発鉱物とともにドロマイトが沈澱する (Shinn et al., 1969; Moore, 1989).
また,潮湖やラグーンで生成した塩分濃度の高い水が,堆積物中に浸透し,ドロマイト化が起ることもある (Seepage-reflux model; Deffeys et al., 1965).
2) 混合水帯−海水と淡水が混合する事により,水が方解石に対して未飽和,ドロマイトに対して過飽和という条件になりうる.このモデルは Land (1973) や Badiozamani (1973) により提唱され,蒸発環境の証拠を含まない地質時代のドロマイトに適用された.しかし,海水ドロマイト化のモデルが提案されてから,適用される事は少なくなった.
3) 海水環境−海水からドロマイトが生成できることは Saller (1984) により太平洋の環礁で示された.現在の太平洋の水深1000m程度の海水は,方解石に対して未飽和,ドロマイトに対して過飽和であり,この様な水が炭酸塩堆積物中に浸透するとドロマイト化が起こりうる.
4) 還元的環境−微生物による硫酸還元反応により硫酸イオンが消費されるとドロマイトの沈澱が起る (Vasconcelos and McKenzie, 1997).
5) その他−熱水の侵入によるドロマイト生成や深部埋没環境におけるドロマイト化の例も報告されている.
ドロマイトの分類は成因を基にされるのが理想である.しかし,多くのドロマイトの成因は不明であり,特に画像に示される形態的特徴のみで,成因を論じるのは困難である.そこで,ここではドロマイトを「交代性ドロマイト」・「ドロマイトセメント」・「堆積性ドロマイト」の3つに区分して掲載する.
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