Pleistocene Ryukyu Group
琉球層群
琉球層群はMacNeil(1960)により命名された層序区分単位であり,琉球列島に分布する更新統のサンゴ礁複合体堆積物,およびそれらと同時異相の海成および陸成の砕屑岩より構成される.陸上では,小宝島以南の島々に露出する.最近の研究により,本層群の形成は更新世初頭(1.45〜1.65 Ma)にまで遡ることが明らかにされている(Yamamoto et al., accepted; 小田原ほか,2005).前期更新世(0.8〜1.65 Ma)の堆積物は,沖縄本島(Yamamoto et al., accepted; 兼子・伊藤,1995;小田原ほか,2005),伊良部島(本田ほか,1993;Sagawa et al., 2001),久米島(江原ほか,2001),与論島(小田原・井龍,1999)などで確認されているが,中期更新世のものと比べると小規模であり,それらの堆積物から判読される海水準変動の振幅も相対的に小さい.よって琉球列島では,前期更新世の小振幅・短周期の海水準変動に呼応して,小規模なサンゴ礁複合体堆積物が形成されたと推定される.一方,更新世の中期(0.4〜0.8 Ma)には,サンゴ礁の形成域が琉球列島全域に広がり,その時期の大振幅・長周期の海水準変動に呼応した大規模なサンゴ礁複合体堆積物が形成された (Yamamoto et al., 2006).この時期に堆積した琉球層群は,多くの島々において同層群の主部をなす.なお,前期更新世〜中期更新世半ば(0.4〜1.65 Ma)に堆積した琉球層群は,アグラデーショナルもしくはレトログラデーショナルな累重様式を示す.このことは,この時期に琉球列島は沈降傾向にあったことを示唆する.中期更新世の半ば以降(< 0.41 Ma)に形成されたサンゴ礁複合体堆積物は,八重山諸島,伊良部島,沖縄本島,粟国島,与論島,徳之島,喜界島などでみられる.この時期の堆積物は,琉球層群主部に対してオフラップの累重様式を呈することから,琉球列島は中期更新世の半ば以降,隆起へ転じたと推定される.
琉球層群は主としてサンゴ礁複合体堆積物の累積体よりなり,個々のサンゴ礁複合体堆積物は,更新世の海水準変動に対応して形成された堆積物と考えられる.そこで,琉球層群の層序を確立するためには,同層群を構成する石灰岩および砕屑岩の累重関係と空間配置から,低海水準期から海進期を経て高海水準期(さらには海退期)に至る一連の海水準変動に対応して形成されたと考えられるサンゴ礁複合体堆積物を認定し,これを一つのユニットとする.
 一つのサンゴ礁複合体堆積物は,浅海相(水深50 m以浅の堆積物)であるサンゴ石灰岩と,沖合相(水深50 m以深の堆積物)である石灰藻球石灰岩・Cycloclypeus-Operculina石灰岩・淘汰の悪い砕屑性石灰岩よりなる.海水準の上昇とともにサンゴ礁複合体堆積物は次第に島の内陸側に向かってその分布域の高度を増し,浅海相のサンゴ石灰岩は沖合相である石灰藻球石灰岩・Cycloclypeus-Operculina石灰岩・淘汰の悪い砕屑性石灰岩の分布域よりも地形的に高所にまで分布する.よって陸域側の地形的高所ではサンゴ石灰岩のみが認められ,それは下位のユニットを構成する石灰岩と不整合関係で接する.一方,海側の地形的低所では,堆積時に造礁サンゴが生育可能な堆積深度にまで浅海化しなかったため,沖合相の石灰岩が整合一連の関係で累重する.また,両者の中間に位置する地点では,サンゴ石灰岩の上位に沖合相の石灰岩が整合関係で重なり,この沖合相の石灰岩のさらに上位には,高海水準期〜海退期に形成されたサンゴ石灰岩が載る.なお,この最上位のサンゴ石灰岩は,無堆積もしくは削剥のために,みられない場合が多い.

琉球層群の堆積物は,それらを構成する生物遺骸,特に造礁生物の種類および組成によっていくつかの岩相に区分される.各岩相区分単位の堆積環境は,現在のサンゴ礁における生物相および堆積相との比較によって決定される.各岩相の定義,堆積学的特徴,古生物学的特徴,堆積環境は,下の表のようにまとめられる.

本項では,琉球層群について,露頭での,1) 層序関係,2) 岩相,3) 薄片写真とともに,4) 南北大東島に発達する第三系大東層についての画像も掲載する.

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